「超小型EV」でEVビジネスを変えるトヨタの奇策 (2019/10/30)

トヨタが2020年冬に画像のような「超小型」電気自動車を発売しようとしていることについて、 池田直渡氏は、記事の中で「航続距離がいらないお客さん」にバッテリーを小さくして値段を下げる「実に恐るべき戦略」と書いていました。
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一日当たり100キロも走らず、軽自動車を使っているであろう「電力会社。役所の公用車を筆頭に、公的要素のある事業の全て、インフラ企業や郵政や、保険・金融関連など」が電気自動車に切り替えたくても「軽自動車を350万円のリーフにはできない。三菱のi-MiEVだって300万円。これでは現状の軽自動車と置き換えられない」との論理で、冒頭の結論にいたっています。(この文脈からは、i-MiEVも軽自動車のように誤解してしまいますが、軽自動車規格のi-MiEVは2018年3月に製造が中止され、上記の300万円i-MiEVは普通車規格です)

ならば、電気自動車が「超小型」とまでは行かなくても「軽自動車」で200万円ならいかがでしょう。ガソリン代やエンジン・オイル代はいらないことから維持費は格段に安くなり、事業運営に必要なエネルギーを100%、再生可能エネルギーで賄うことを目標とする「RE100」 のような国際的な活動にも参加しやすくなり、企業イメージを高めることに役立つことでしょう。もちろん一回の充電で100キロ走ることが条件です。

i-MiEV Mグレードが来た1(2011/08/20) 

「軽自動車」であれば、「荷物」をほとんど積むことができない「超小型」とは違い、ある程度の「荷物」は運ぶことができます。また、給油の速さではエンジンが有利とも書いていますが、上記のような企業が営業回りに電気自動車を使うとすれば、昼休みに営業所などで充電すればすむことで、給油するためにガソリンスタンドへ行かなくても良くなる分、時間の節約になります。もちろん、電池の容量が少なければ200Vで充電しても結構な量が入ります。(一般的な200V15Aで1時間換算で3kWh)

100キロ走り200万円の軽電気自動車など存在しないと思われるかもしれませんが、過去にはありました。このことを、筆者は知っておられたのか、ご存じなかったのか。2011年7月に発売された三菱 i-MiEV 10.5kWh(Mグレード)は、車両本体価格が266万3000円でした。その当時、この車への補助金は74万円でしたから、192万3000円で買うことができたのです。

今、発売されている300万3000円のi-MiEVは、それよりも多い16kWhの容量ですし普通車規格です。また、補助金はじょじょに引き下げられており、このi-MiEVには現在16万4000円しか出ませんから高く感じるのは仕方ありません。しかし、筆者が書くように「航続距離がいらないお客さん」にバッテリーを小さくして値段を下げた電気自動車は実際にあったのです。

「実に恐るべき戦略」をすでに三菱は、8年も前に実践していたのですが、総数1万台ほどで販売を終了してしまいました。登場する時代が早すぎたのかもしれません。

2016年12月に「EV事業企画室」を立ち上げたトヨタにとって今回の「超小型」電気自動車は「奇策」でもなんでもなくて、時代を見ながら、環境規制の動きをながめながら「EVシフト」とみるや、錬ってきた対策を打ち出したにすぎないでしょう。後出しと言われようとも「業績」というジャンケンには勝てば良いのですから。