EV大競争時代も、遅れる日本の「基礎充電」インフラ(2017/08/07)

副題の「普通充電のコンセント、普及率は1%程度」につい反応してしまい、?が3つぐらいついたので読み進めてみると、さらに?が4つぐらいついたので、気になったことを書きとめておきます。
(急速と)普通と合わせた充電器の総設置数は2万8260基で、“電欠”を起こさずに全国を走れる水準とされるなど、整備状況は悪くない。
 ただこれはあくまで基数であり、スタンド数ではない。1カ所で複数の給油ノズルを持つガソリンスタンド(全国約3万1000カ所)に比べて遠く及ばないのが現状
確かにガソリンのセルフスタンドには1カ所に6つや8つといった複数のノズルがある所が多いために31,467カ所(2016年度)の実数はさらに膨らみ、充電器との差はひらきますが、ここには、記事にもある『基礎充電』の自宅などの充電コンセントは含まれていません。『基礎』というぐらいですから、電気自動車は自宅などで駐車中の充電が基本です。遠く及ばなくてもそれらを含めて比較すべきでしょう。

次の行にその普通充電のコンセント数が以下のように書いてあるのですが、「55万基」という数字は初めて見ました。ただし、出典が書いていないので確かめようはありません。日本国内の存在する普通充電器の数は、すべての電気自動車などのユーザーが自宅に充電器を設置したと仮定して、多く見積もって現在14万カ所ぐらいでしょう。

(加筆:コメントいただいた中に、経産省が2017年6月に出している「電気自動車・プラグインハイブリッド自動車の充電インフラ整備事業費補助金について」というものを教えていただきました。その中にある「設置場所ごとの設置状況」に「普通充電の充電コンセントは約55万基程度にとどまる ※EVPOSSAホームページ」とありました。「EVPOSSA」とは、「電動車両用電力供給システム協議会」のことで、そのHPに「充電施設情報」というデータがあるのでそこに書かれているものと思われます。ただし、パスワードがかかっており、9月14日に解除申請をおこなっていますが、返信はまだありません。

また、その表の中に住宅の40パーセントを占める共同住宅への設置「2020年までに既築マンションへの設置が必要」と書きながら、2017年度の目標が「2000基」とは、55万基と比べていかにも数字が小さく違和感を覚えます)
「基礎充電」と呼ばれるマンションや個人宅、事務所、工場などの非公共部分。日本の住宅総数約5200万戸に対し普通充電のコンセントは約55万基と普及率は1%程度に過ぎない
充電スタンドの検索サイト「GoGoEV」には、普通充電のスタンドとして9月9日現在14,670カ所があがっていますが、これは自動車ディーラーやホテルなど一般に公開されている数です。この他に未公開ではありますが、従業員用に事務所や工場などに複数設置されている所もあるでしょう。そして、何よりも普通充電器の大部分を占めるのは、電気自動車やPHVなど充電できる車のオーナーが自宅で充電するために設置したものだと考えられます。

その数は定かではありませんが、次世代自動車振興センターの補助金を受けた台数によると、電気自動車は2009年から2016年までで74,058台、PHVは48,036台となっており、合計で122,094台となります。「世界初の量産型電気自動車」である三菱アイミーブの法人販売は、2009年から始まっていますから、この台数がおよその数であると考えて良いでしょう。

その約12万台の中には、マンションにお住まいの方もいらっしゃるでしょうから、仮に購入者の半分が普通充電器を設置したとすると、61,047カ所もの隠れた充電器が存在することになります。「GoGoEV」の登録数は、急速充電スタンドが7,135カ所、普通充電のスタンドが14,670カ所ですから、3つを合計すると82,852カ所となり、ガソリンスタンド31,000カ所(1カ所に6つの給油ノズルがあるとすると186,000カ所)には近づくことができるでしょう。

充電施設はガソリンスタンドの半分以下ですが、この数が「遠く」及ばないというのは思い違いに過ぎないことは、ガソリン車との台数を比較すればよくわかります。

2017年5月末現在の4輪車の保有台数(特殊用途も含む)は、全国で77,805,402台となっており、集計年度が違っているため正確ではありませんが、4輪車に占める電気自動車とPHV約12万台の割合は、約0.2パーセントでしかありません。そのわずかの台数にもかかわらず、ガソリンスタンド数(ノズル数)の45パーセントもの充電器がすでに設置されていると考えることもできるからです。 
「自宅に充電器がない」「充電ステーションが充分でない」「充電時間が長い」と充電関連の3項目の回答が合計26%に達し、車両価格に次いで充電インフラが普及の足かせになっている実態が浮き彫りになった
この辺りも掘り下げて書いてほしいのですが、何ら追加の説明はありません。そればかりか、前に普通充電器のことを書いていたのに、次ぎに書かれている文章は、自家用車に電気自動車を購入しようかと考えている読者には何ら関係のない急速充電器設置にかかる高額な経費についての話です。これでは、電気自動車に興味を持ち買ってみたいと思っている読者に助けとなる説明とはならないでしょう。調査データは経産省のものですが、こうしたマスコミ記事の思い込みが電気自動車の「常識」を作ってしまっている面があります。

「自宅に充電器がない」
日産では、月会費2,000円(税別)を払えば何度でも充電できる「旅ホーダイ」プランを用意しているので、自宅の近くに日産ディーラーやそれに提携している急速充電器があれば、自宅に充電器がなくても心配はありません。また、マンションなどへの普通充電器の設置は難しい場合がありますが、持ち家であれば、コンセント自体は3,800円 ほどですから近くの電気屋さんに基本的な機器のみで頼めば安くコンセントをすぐに設置することができます。これには200Vが必要ですが、よほど古い家でなければ今ある家に、エアコンや食洗機などのため200Vは引き込まれています。

「充電ステーションが充分でない」
人里離れた山の中に充電ステーションはありませんが、全国には思った以上に設置されています。充電スタンド検索サイトのEVsmartGoGoEVで捜すと具体的な場所がわかり、心配することはないことがイメージとしてつかめるでしょう。

「充電時間が長い」
急速充電でも「30分で80パーセント」、新型リーフでは「40分で80パーセント」 と言われると充電時間が長いと思わざるを得ませんが、これはあくまでも目安を示したものであり、外出先では必要に応じて必要なだけ電気を入れるというのが「充電」の良い方法です。
ガソリン車の場合は、ガソリンスタンドで基本『満タン』にすることが多いですが、電気自動車の場合は、電池が劣化してしまいますから急速充電では満タンにしません。こうした違いがあるにもかかわらず充電時間をイメージしてもらうために自動車メーカーが「30分で80パーセント」という表現をしたために、「充電時間は長い」というレッテルが貼られてしまいました。