[牧野茂雄の自動車業界鳥瞰図] 欧州の「EV待望論」をどう読むか(2017/08/12)

記事の中でいくつか気になる文があったので取り上げておきます。 (記事は1ページ目だけが公開されており、続きを読むには会員登録(無料)が必要)
日本の電力事情は原発ゼロである
記事の日付である8月12日現在5基、九州電力川内原発1・2号機と四国電力伊方原発3号機、 高浜原発3・4号機が稼働しています。
家庭に供給される直前で最終的に100Vに落とす……という一連の手順を減ると、ここだけで少なくとも20%のロスが発生する。そうして得た家庭用100Vを200V以上に昇圧してEVに充電し、EV内に蓄電し放電する
わが家は約20年前に建てていますが、一般的な住宅と同じように100Vと200V両方入っており、200Vの電気自動車用コンセントをつける前、200Vはエアコンや食洗機用に使われていました。通常のブレーカーには、赤、白、黒の三色の電線が繋がれており、昇圧することなく赤と黒の線を繋ぐと200Vの電圧が掛かるようになっています。

最初の方にある「すべての郵便車をEVに切り替えた欧州の小都市でも、EV郵便車の充電にはシフト制が敷かれている。同時に充電する台数を制限しているのだ」もよくわからない文です。想像ですが、一つの郵便局内に20台の電気自動車があったとして20台すべての車を同時に充電しようとすると、契約容量をオーバーしてしまうので、たとえば10台ずつといったシフト制を敷いているだけで、他の場所にある郵便局でもそこの契約容量をオーバーしなければ同時刻に充電できます。 

「自動車技術情報サイト」という「技術」をうたう記事であっても「技術」的に首をかしげざるを得ないところ満載です。電気自動車が増える=電気が足らなくなる=原子力発電が必要になる=電気自動車には原子力発電の再稼働が必要というふうに結びつけたいかのようです。

ちょっとデータは古くなりましたが、電気自動車と電気の関係についてはEVのデメリット(2013/06/29)に以下のような項目でまとめてあります。その頃よりも確実に省エネ機器が広まっていますから、全体として消費電力は少なくなってきており、現在動いている5基の原子力発電所が稼働していないときでも停電は起こらなかったことは周知の事実です。

8) 「節電」中に「電気」を自動車に使っている(電気代がかかる)
9) 電気も石油資源で作っている
10)EVの普及がすすめば原発が必要になる
(EV1台が1時間で必要とする電気量は 200V×15A×1h=3kWh)もし,東京電力管内だけにEVが100万台があったとしても,東電の火力発電所だけで約3277万kW(1 時間発電して3277万kWh,8時間で26216万kWh)の発電能力があるそうですから,その10%ほど電力消費量が増えることになります。しかし,この電力消費量なら、比較的発電能力に余裕のある時間帯(23時〜翌朝)での充電ですから負荷はかからないでしょうし,発電能力内ですから発電所を増やす必要もありません。ですから「原発」は全く必要としないといえます。
ただ,電力会社は新たにEVへの充電のために発電しなければならず,その分コストが上がってしまうでしょうが,日本の国として考えた場合には(9)に書いたように7分の1ですむことになります。
(加筆)
また、以下の私のブログでも「電気自動車の普及と「原発再稼働」とを結びつけたがる人はいるのですが、冷静に計算すれば、原子力発電を必要としないことは明らかです」と書いています。 EVのデメリットの一つとして自虐的に「EVの普及がすすめば原発が必要になる」と最初に書いたのが2012年ですから、その頃から5年たってもデータの更新はなされていないということのようです。いずれにせよ、あいまいな「情報」に左右されることなく,冷静にどのようになるかこれからも判断していきたいです。

EVの増加は電力不足をまねく?(2016/12/31)