屋久島に見る電気自動車普及の「壁」(2017/03/17)

鹿児島県屋久島で2010年から始まった「CO2フリーの島作り」に取り上げられた電気自動車の普及に壁ができていると、読売新聞企画委員が解説した日テレNEWS24の番組ビデオです。
この中でその「壁」の原因は、以下のものが取り上げられていました。
  1. 表示される「航続可能距離」の減り方に心理的負担
  2. 「電欠」への恐怖
  3. 急速充電器数の不足
  4. 急速充電器の使い勝手が悪い
1.:高低差のはげしい屋久島では、山へ登る場合、「航続可能距離」は激減するため、下りでその距離が増える電気自動車とガソリン車との違いをレンタカー利用者は、理解できなかったようです。この「航続可能距離」は電気自動車オーナーでも振り回されることがありますから、別の数字、たとえば電池残量をパーセントで示すなど他の方法でクルマの状態を運転手に見せる工夫も自動車メーカーには求められるでしょう。
後は、もともとが違う性質のクルマなので、そこをすぐにわかってもらうことは無理ですから、距離の伸びた新しい「リーフ」に期待するしか方法はないでしょう。

02
EVsmartのHPより引用)
2.と3.:屋久島は周囲約100kmだそうですから、現在ある4基の急速充電器位置を上の地図のようにバランスよく配置しているようですが、それでも乗り慣れていない人にとって、より短い間隔で充電器が設置されている方が1.にも関わって「安心」をうむことは間違いありません。
島内ほぼすべての電力は水力で賄われているそうで、普及促進のためにか無料の充電器がほとんどです。屋久島最大のCO2排出源の「ガソリン車」を減らすには、設置費用はかかりますが、急速充電器を増やすことが一番の近道でしょう。
ただし、番組では電気自動車を利用する「観光客」と「住民」とをごちゃ混ぜにして話を進めていたことが気になりました。番組で紹介していた山中の観光地を住民が訪れることはまれにしかないでしょうし、島を一周することもまずないでしょう。ですから住民は、海岸を周遊する道路や住宅・勤務先への通勤利用がほとんどのはずです。
まず、観光客の利用を考えるのであれば、急速充電器を等間隔に設置する必要はなく、高低差といった地形や使用頻度から場所を選定すれば、必要な場所は限られ、つくる数は必要最低限ですみます。住民の立場から考えれば、電気自動車の基本は自宅での夜間充電ですから、満充電になっていれば、航続距離の短いアイミーブでも周囲約100kmの中で、それほど電欠の心配はないと思います。番組中では、「使いやすくするためにスーパーなどに(急速充電器を)置く」と述べていましたが、買い物時間を考えれば、200Vの普通充電器で十分です。
(ビデオでは急速充電器はすべて「無料」とのことでしたが、GoGoEVによると鹿児島県 屋久島事務所は有料となっていました。また、「急速充電器」といっても40kW以上(2基)のものと20kW(2基)のとが混在しています。なお、島内には普通充電器が16カ所設置されており、有料は1カ所のみです。)
 
4.:せっかく「無料」で充電器が提供されていても「利用時間が限られている」ために使い勝手が悪いということです。7年もたって、その使用状況はわかってきたと考えられますから、24時間開放することが一番でしょう。「CO2フリーの島作り」を優先するか、機器の管理を優先するかの判断でしょう。
無料を逆手にとって、充電後、電気を持ち帰り、自宅で使用するようなルール違反の心配があるのかもしれませんが、急速充電器を利用する住民は県の屋久島事務所にカード貸与申請するそうですから、203台あるという電気自動車利用者は把握できるはずです。

鹿児島県ではこのまま続けるのか検討中とのことでしたから、私から提言できるとすれば、以下のようなことです。(鹿児島県関係者がこのHPを見ているとは思えませんが)
  1. 40kW以上の「急速充電器」をデータを吟味して設置
  2. 既存の急速充電器を24時間開放
  3. 自宅の充電コンセントを推奨するために補助金交付
  4. スーパーや店舗、レストランなどへ普通充電コンセント設置のために補助金交付
  5. 電気自動車購入者への補助金増額
 1.:上に述べたように何台も高額な急速充電器を設置する必要はありません。観光客向けに利便性が高く、待機スペースもある急速充電器が望まれます。番組では「急速充電は20分とか30分とかかかる」とありましたが、島内の40kW以上のものと20kWのとでは、充電時間が倍ほど違ってきます。
P1140891
道の駅「浅井三姉妹の里」の例)
2.は略
3.:上に書いたように電気自動車は夜間充電が基本ですから、既存の203台のところに200V充電器がなければ、補助金を出してでも設置してもらいます。朝、100パーセント充電できていれば、島内移動で昼間追加充電することはまれで、住民同士が充電待ちする回数は確実に減ります。(コンセント自体は税抜3500円+工事費)

4.:買い物や食事が20分以上かかることは多いですから、急速充電器よりは普通充電器の方が、それも普通を複数設置する方が利便性は高まります。設置・維持費用も急速充電器に比べれば格段に安くて済みます。

5.:番組では触れられませんでしたが、電気自動車購入者が減っている要因の一つに車両価格の高さがあります。購入後の維持コストを考えれば安くて済むのですが、誰もが注目するのは目の前の金額です。電気自動車の価格は少しずつ下がってきていますが、国の補助金も減ってきているために、払う金額は減らないばかりか逆に増えてしまっている場合もあります。本気で「CO2フリーの島作り」を優先するのであれば、普及に向けた補助金額の見直しも必要でしょう。

最後に番組の感想ですが、これはあくまでも「屋久島」での「壁」の話なのに、日本全国で「充電設備が整えば(普及も可能だが)、今のままでは(普及は)とっても無理」と飛躍している感じがしました。現実には地道ではありますが、全国の道の駅にも設置が進みつつあります。(リンク先の「ニュース&トピックス」欄にある「一覧を見る」参照)話題に出ていた「(満空)利用状況を知らせるサービス」は三菱車専用ではありますが、すでに存在しています。国の補助金については全く触れられていませんでしたが、新年度には、プラグイン車にはなぜか補助金が大幅に増え、電気自動車への補助金はほとんどが減ります。
「普及」を阻んでいる原因は何なのか、もう少し課題を掘り下げ、調査をすすめて再度番組に取り上げてほしいものです。