平成 29 年度「クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金」に係る補助事業者募集要領(2017/02/09)PDF
経済産業省は2017年度の「「クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金」の交付先の公募」をおこなうとともに、その公募要領を発表していました。(予算額140億円、採択件数63,067件)
それによると電気自動車は、今年度までのバッテリー容量(kWh)×11,000円というものから、一回の充電で走行することができる距離(km)×1,000円と算出方法が変更になっています。ただし、上限額は40万円です。(また、プラグインハイブリッド車は、要領の中に計算式がなく不明ですが、電気自動車と同じだろうと思われます。)こちらは、EV走行換算距離が30km以上の車両が対象という条件と上限額が20万円となっています。

(加筆:上限額20万円は記載されていますが、補助対象経費も20万とだけ書いていますから、コメントいただいたようにプラグインハイブリッド車は一律20万円なのかもしれません。もしそうだとすると、三菱や日産の一充電走行距離が200km以下の電気自動車よりも、電池だけを使っての距離が60km台とはるかに少ない車の方が補助金額は多くなりますから、純粋の電気自動車よりもプラグインハイブリッド車の方を普及させたいとする方策になります。20万円というと新年度の電気自動車換算で200km走る計算ですから、プラグインハイブリッド車をいくら優遇したいといってもこの設定には無理があるでしょう。)

後ほどにメーカーから公表されているJC08 モードを元に予想される2017年度補助金額の一覧を載せていますが、結論から言うと、ほぼすべての車種で補助金が減額されます。(加筆:プラグインハイブリッド車は大幅増かもしれません)ですから、電気自動車がほしい方は今すぐに契約されることをおすすめします。ただし、今年度の車両の初度登録は2017年3月3日まで、補助金の申請書受付は3月6日必着となっていますから、流通在庫車のみとなりそうです。この発表は2月9日にされていますから、もう少し早く気づくことがでれば良かったのですが。
ただし計算上は唯一2車種、三菱 i-MiEV Mグレードが5000円、BMW i3 (33.2kWh)が25000円、補助額が上がりますから、この車をお望み方は、新年度に登録された方が良いでしょう。また、新年度に補助金が減る分、メーカーは車両価格改定をおこない安くするだろうと考えられなくもないですが、過去の例からいうとシステムのグレードアップやわずかな減額はあっても、補助金削減額よりは少ないので、実質的な支払額は多くなっていました。(最終的な判断は、あくまでも自己責任でお願いします)
ミニキャブミーブの価格推移(2017/01/26)

今回の算定基準改定で影響が大きいのは、バッテリーをたくさん積んだ高額な車と重い車です。たとえば、テスラの車は今年度すべて上限の60万円が出ていますが、これが40万円になりますから、これだけで20万円マイナスですし、モデルXの60kWhなどはモデルSにくらべて距離が伸びませんから26万2,000円もの減額になります。また、日産e-NV200 は、リーフの24kWhと同じ電池を積んでいますが、こちらも距離が出ない分、7人乗りではリーフの倍ほど額が減ってしまいます。これは、同じ電池を積んでいる三菱 ミニキャブ・ ミーブアイミーブでも言えることです。
BMW i3 のように容量の大きな電池を積み、車体が軽く、航続距離が長い電気自動車が次年度の補助金制度では有利です。今後は、BMW i3のように300kmを越す電気自動車が次々と発売になりますから、それを見越しての制度変更かもしれません。

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※プラグインハイブリッド車の百円の端数は切り捨てになるかもしれません。

2月15日に発売になったプリウスPHVですが、事前に8000台予約があったといっても実際の納車は3月以降でしょうから、3万円ほど減額になる説明が今ないと支払時に話が違うとトラブルになっていまうかもしれません。また、テスラ車は船で搬送されてくるから特にそうでしょうが、他のメーカーでも予約は昨年末に済ませていても登録は3月以降なら、補助金額が変わってきますから、ディーラーは対応に苦慮されるかもしれません。
ちなみに、プリウスPHVが1万台販売されると6億8000万円の補助金が必要になります。

補助金交付額一覧(2017/02/15現在)


(加筆:もしかしてプラグインハイブリッド車が一律20万円だったときの一覧) 
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加筆:こうしてみると、2月15日に発売になったプリウスPHVのためだけに補助金制度が改定されたと考えても、あながち間違いではない表になってしまいます。事前に8000台予約があったといっても実際の納車は3月以降でしょうから、登録日さえ間違えなければ、プリウスPHVは今年度の倍の補助金を得ることができます。ちなみに2016年度は、登録は2016年3月14日から、申請書受付は2016年4月20日からでした。
なお、プリウスPHVが新年度に1万台販売されると20億円の補助金が必要になります。予算額は140億円(これは事業費であって、事務経費を引くと実際に補助される金額はもう少し少ないかもしれません)ですから、プリウスPHVだけで7分の1が消えることにもなります。

プリウスPHV(2017/02/07)に「今までの補助金を巡る経過から減ることはあっても増えることはありませんでしたから、・・・トヨタのことですから、過去の経緯をひっくり返して、逆に新年度には1kWhあたり2万円とかを引き出してくるかもしれません」と書きましたが、悪い意味でこれが実現するかもしれません。
補助金を出してもなかなか電気自動車の普及が進まない中、とりあえずプラグインハイブリッド車を広めたいという政策もわからなくはありませんが、純粋の電気自動車であるアイミーブ系や e-NV200 のほうが額が少なくなるというのは、事業目的の一つである「CO2排出量の削減」の理念に沿ったものでは到底ありません。また、外国の自動車メーカーが昨年からこぞって電気自動車分野への進出を表明してきた時期にもかかわらず、補助金を減らすようでは、事業目的としている「世界に先駆けてクリーンエネルギー自動車の市場を確立」にも反するでしょう。 官僚には「優秀な」という形容詞がつけられることがよくありますが、自分達で作った「目的」と「具体的な中身」との整合性がとれないようでは、「優秀な」は返上すべきでしょう。