2017年、トヨタが本気になると日本はイッキにEV大国化する?(2016/12/29)
まもなく発売されるとされる「プリウスPHV」が「2017年以降“事実上の日本最多販売EV”になる」かもという記事です。2016年最後のブログがPHVの話題とは、何ともしまらない話ですが、気になる点があったので、補足を書いておきます。
筆者は、もしプリウスPHVの値段が約300万円だったら年間10万台ぐらい売れるかもしれない。そうすると、本ブログの『新型「プリウスPHV」続編-2016/06/20』でも指摘したように、トヨタが「自宅充電」を推奨しても、急速充電が使えるなら充電したくなるだろうし、その影響で充電渋滞が起きやすくなるだろうと予想してます。ここまでは私も書いた通りですが、「もし」はさらに続き、「プリウスPHVが2017年10万台! 2018年20万台!! と増えたら・・・全国に5500店舗・・・ここに最低1店舗1つは急速充電器を付けるとしたら・・・もちろんそうなると電力不足が起こり、原発再稼働問題・・・が巻き起こるでしょう」と書いています。(carviewのコメント欄にはいろいろな意見がありますが、ここでは「電力不足」に絞って書きます)

電気自動車の普及と「原発再稼働」とを結びつけたがる人はいるのですが、冷静に計算すれば、原子力発電を必要としないことは明らかです。(そもそも検討以前において、トヨタ系列の5500店舗すべてに急速充電器が1台ずつ設置されたとしても、そこで同時刻に一斉に充電をできる数は5500台だけです)
データは古いですが、「節電社会にこそ電気自動車を(2011/09/12)」には、夜間充電が前提ですが「もし、バス、トラックも含めてすべての車が電気自動車になったら・・・年間で約1000億kWh・・・日本の電力消費量は、年間でおよそ1兆kWh・・・10%ほど電力消費量が増える」とあります。10%増なら十分に賄える量でしょう。(補足:コメントいただいたように電力会社によっては、昼間帯に供給力が需要を上回る事態も考えられています) また、「プリウスPHVは自宅で(2016/12/07)」にあったように、夜間の電気代を安くするなどで夜の充電へと誘導・分散化すれば、営業車を除いて昼間に集中することはないでしょう。

また、「節電と電気自動車(2011/12/29)」で書いたように、200Vの普通充電では、1台が1時間で3kWh、100万台分なら300万kWhを必要としますが、たとえば関西電力の供給能力は原子力発電を除いて最大で2864万kW(1時間発電して2864万kWh)(2015末「電源別発電設備容量」)ありますから、上記と同じように10%ほどの割合です。これは多いように見えますが、明日すぐに関西電力管内だけで、電気自動車が100万台に増えるわけではありませんし、電気自動車が増える見通しがつけば、昼間の需要に合わせた太陽光などの再生可能エネルギーを増やすことで対応できるでしょう。(補足:九州電力管内の太陽光発電設備量は平成27年5月末から1年間で約110万kW増加
具体的に関電のデータを見てみると、2015年7月31日14時から15時のピーク時供給力は2791万kWで、当日の使用実績は2510万kWと約89%になっています。この日100万台の300万kWを加えると足らなくなりますが、電気自動車の利用を前提としなくても今でも100万台分近くの余力はあるともいえますから、すぐに電力不足をまねくと悲観的にならなくても良いでしょう。

100万台の発電燃料は、電気自動車の方が省エネですから余った石油を回せばよく、「節電社会にこそ電気自動車を」にあるように「日本の石油輸入のうち、およそ35%が自動車用燃料として使われているが、これが5分の1(加筆:20%)でよいことになる」のですから、電気自動車の増加でかえって「画期的な省エネ社会が実現」するのです。
さらに100万台の電気自動車すべてが昼間に走っているわけではないでしょう。スマートグリッドが広まれば、夜間に充電していた車が、通勤後、昼間駐車している間に必要な車に電気を融通するということも可能となるでしょう。駐車中に売電することができれば、眠っている資産を生かすことにもなります。
いずれにせよ、あいまいな「情報」に左右されることなく,冷静にどのようになるか2017年も判断していきたいものです。

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