電気自動車に乗りながら気になっていたことは、暖房がどれくらいの時間もつのかということです。

エンジンの熱を利用できない電気自動車では、本来は走行するための貴重な電気を暖房のために使っています。ですから、暖房のスイッチを入れれば、メーターに表示される走行可能距離はいっきに小さくなってしまいます。そこで、一人で乗るときには厚着をして、日々電気の節約に心がけていますが、積雪などで渋滞に巻き込まれ、進むことができなくなったときには、長時間その場で立ち往生せざるを得なくなります。エンジン車であれば、ガソリンがある限り暖機運転でしのぐことはできますが、電気自動車の場合は、最悪短時間で電欠となり、寒さを避けるために電気自動車を放棄しなければならない事態になりかねません。

そこで、実験をしてみました。

昨日は、まだ2月前半だというのに春がそこまで来ているような天気でしたが、9日は寒い一日になるということで、朝から実験をしてみました。本当は、雪の降り続く日にしたかったのですが、今シーズンはもう望めそうもありません。

実験の条件・状態は以下の通りです。渋滞に巻き込まれて身動きできなくなる時に電池残量が100%ということはありえませんが、今回は自宅での普通充電で満充電後に始めました。車種や電池の違いにより、同じように温度変化するとは限りませんが、参考にしていただけると幸いです。

  • アイミーブMグレード(10.5kWh)2011年8月購入
    • 走行距離53890km
  • 電気温水式ヒーターが備わっているが、少しでも省電力で行うためにエアコンはオフ
    • 現在のヒートポンプエアコン・タイプではない
  • 屋根だけある車庫に停車(風は通る)
  • 15分ごとに測定
    • 測定時の出入りで空気は多少入れ替わる
  • 外気温は、アイミーブ車体から20cmほど離れたところで測定(雨に濡れない位置)
  • 車内温度は、前席の中間地点(下の写真部分)で測定(吹き出し口に近かったと後で反省)
  • ヒーターコントロールダイヤルは、暖房側に6段階のうち最少の1段目で使用
  • 送風は8段階の中の最少の1段目で使用
  • 温風の吹き出しは、足元に固定
    • 空気は暖まると上部に集まるから
  • 天候:曇り時々晴れ、のち雨、時々ミゾレ(晴れ間に気温が上がった)

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  • 開始時刻:6時45分
  • 開始外気温:-0.4度
  • 開始車内温度:0度
  • 開始電池残量割合(SOC)100%

  • 終了時刻:18時45分
  • 終了外気温:2.4度
  • 終了車内温度:12.8度
  • 終了電池残量割合(SOC)47%

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電池残量割合(SOC)(%)の減り方

固定した状態で行う限り、電池残量割合(SOC)は1時間に約4〜5%ずつ減少していきました。時間の都合で開始から12時間で実験は終了しましたが、1時間に約4〜5%減ということは、計算上は100%なら約20〜25時間稼働するということになります。ですから、残りの容量が40パーセントであれば約8〜10時間というふうに、停車時の電池の残量割合によって、何時間暖を取ることができると計算することができそうです。

(割合を知るには、テクトムの燃費マネージャー「FCM-NX1」のような機器が必要。また、東芝のリチウムイオン電池「SCiB」の場合、走行には最後の3〜5パーセント以下の電気は使うことができないが、停止した状態での暖房にはギリギリまで使用することができるかもしれない。(加筆:コメントをいただいたように、残り15%で亀マークが出た時点でヒーターが自動的にOFFになるので、亀マーク以降は暖房は効かない。以下の続編参照)

リンク: 電気自動車ニュース: 「暖房」はどれくらいもつのかをやってみた(続編).(2016/02/17)

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(外気温と車内温の変化)

最少限の温風で実験を行いましたが、車内温(赤色)は、外気温プラス10〜11度ぐらいのところで安定していました。

《結論》

  1. 暖房時の電池の減りは予想以上に小さく、最小限の使用で残りの電気が60%あれば、一晩約12時間は電欠を避けることができそうです。(加筆:出力制御がかかる15パーセント以下を差し引いた電気を暖房に使うことができる。以下の続編参照)
  2. 寒風さえ車内で避けることができれば、体感温度は下がらずにすみ、外気温がマイナスになっても車内が10度ほどあれば、厚着で何とか過ごすことはできそうです。(測定のために15分ごとに出入りしたが、閉じ込められたときは、温めた空気を直接逃すことはない。また、体温で車内温度も少し上がるだろう)

リンク: 電気自動車ニュース: 「暖房」はどれくらいもつのかをやってみた(続編).(2016/02/17)

《その他》

  1. 今回は、電装用バッテリーを使う「シートヒーター」を使用しませんでしたが、こちらは体を直接暖めるので、より暖かく感じるし、駆動用バッテリーの節約にもなるでしょう。(電装用バッテリー容量が減ると駆動用バッテリーから補充される)
  2. 現在発売されているアイミーブには、効率の良い「ヒートポンプエアコン」が採用されており、電力消費を抑えた利用ができるかもしれません。
  3. 雪が積もる地域に住む私は、車が雪で動けなくなったときのためにタイヤの下に敷く簡易毛布を車内に常備しています。念のためにこうした寒さよけにも使える備品は用意しておいた方が良いでしょう。
  4. アイミーブMグレードに使用されている電池は、寒さに強い東芝の「SCiB」ですから、バッテリ性能の低下はあまりないようですが、車種や電池、気温によっては、使うことができる電池の容量は減るかもしれません。
  5. ガソリン車で立ち往生した場合、雪が車の周りに積もることにより排ガスが車内に入ってくる一酸化炭素中毒が怖いですが、電気自動車はこのような心配はありません。