リンク: NEWSポストセブン|電気自動車CM出演し脱原発訴える坂本龍一氏に“勘違いエコ”.

週刊ポスト2012年10月5日号は,大前研一氏のEVへの“勘違いエコ”なる解説記事を載せています。

「電気自動車がエコなのは、原発があるからだ」というところは,少しは合っています。なぜなら原発が「普通」だったころ,原発で発電される電力に余力が出る夜間,その電気を使わせるために電力会社は,エコキュートや電気温水器といった夜に電気を使う機器をすすめ,同時に深夜に充電するEVの普及をはかっていたからです。EVと原発とは,EVの本来の「エコ」とは関係のないところで,強い関係を持たされていました。

しかし,実際にEVを走らせてデータをとってみると,下記に書いたように私のEV(i-MiEV Mグレード)では少なくともガソリン自動車と比較して6倍もエネルギー効率が優れていました。

節電と電気自動車 2011/12/29

2012年9月24日現在まで1年1ヶ月ほどEVに乗っていますから,すべての原発が停止していた時期にも「エコ」な運転を続けていたことは言うまでもありません。

大前研一氏は,記事のデータをどこからとったのかわかりませんが,中に誤りがあります。

「原発の安価な夜間電力(昼間の3分の1の電気料金)」という部分は,一部はあっています。もともと需要の少ない夜間の電力は安くしていたのでしょうが,原発が再稼働したとはいえ,その途中で上がることもなく今も安いままです。関西電力は2012年9月中間連結決算で過去最悪となる1250億円の赤字を発表したにもかかわらず,その料金を上げるという話を聞きません。

「(昼間の3分の1の夜間料金でEVは)ガソリンとほぼ同等のコストになっていた」というところは明らかな間違いです。

私の今までの充電のうち約2パーセントは昼間での充電ですから,すべてが夜間電力でではありませんでしたが,「1万キロ走ったところ1kmで○円」に書いたように私のEVは1km走るのに1.25円しかかかっておらず,ガソリンに置き換えると1Lで約108.8km走る計算になります。ハイブリッド車でもこのようなコストの車はないでしょう。(詳しくは上記にあります。無料で充電してもらっているところもあるので,実際にはもう少し電費は悪くなります)

「原発がなくなって電気料金が昼夜一緒になったら、燃費はガソリンの3倍になってしまう」

基準を誤っているので,上の記述のように間違った記述になります。夜間の電気料金が3倍になって電気料金が昼夜一緒になっても,ガソリン換算で約108.8km/LのEVがその3分の1につまり36.3km/Lになるのですから,トヨタ  アクアの燃費 約26 km/L に近づいていくだけです。

つまり「日本の電気自動車は、そもそも原発があって初めて成り立つ産業」なのではなく,原発がなくても基本「エコ」なのです。「電気自動車に乗りながら脱原発を叫ぶのは矛盾」しないことなのです。

節電社会にこそ電気自動車を(Voice 2011年10月号)清水 浩

大前研一氏には,ぜひEVに乗り換えていただいてガソリン消費の削減に協力していただき,EVの「本当」のよさを宣伝していただきたいものです。

大前氏は地熱発電に言及したところで「日本中の地熱を可能な限り開発したとしても電力需要の5%ほどしか賄えない」と書いてありますが,その根拠が良く分かりません。少しネット上で調べましたが,「2,900万キロワットの発電が可能」(資源環境技術総合研究所,2000年9月)と書いているページもありました。古い原稿ですが12年前でもその可能性を取り上げているのですから,現在はもっと可能性が上がっているかもしれません。(逆もあり得ますが)2,900万kWとは,2012年9月24日における関西電力のピーク時供給力2,594万kW だそうですから,それをも上回る量です。

電気事業連絡会の「電源別発電電力量の実績」によると地熱発電は2009年でも1パーセント以下だそうですから,その辺が頭にあるのかもしれませんが,様々なデータを元にした記述ではないようです。