「節電」が呼びかけられる中,貴重な「電気」を電気自動車(以下EV)に使ってしまってもよいのかという記事をあちこちで見かけます。

「怪しい電気自動車【再】」(JanJanBlog)2011年11月28日

まず,最初に確認しておかなければならないのは,何のために「節電」するかです。

一般的な「節電」とは,電気の「節約」を意味するでしょう。たとえば,使っていない部屋の電灯や見ていないテレビは消す,待機電力をなくすためにコンセントを抜くといった「節電」です。そうすることによって使用する電気の全体量を減らし,少しでも一ヶ月の電気代を安くするというものです。

こうした電気の「節約」「省エネ」はエネルギー資源の多くを外国にたよっている日本ではいうまでもなく大切なことです。ところが,今さかんに呼びかけられている「節電」は,「電力ピークを押し下げる」ためのもので,「節約」「省エネ」とは少しニアンスが違います。

電気は基本的にためて使うことはできませんから(※1),一番電気を使う時間帯に合わせて発電所の準備をしておかなければなりません。3.11以前は,原子力発電所を元にして火力発電所や揚水発電所などで発電量の調整を行っていましたが,原子力発電の割合が下がってきた現在,電力ピークのために備えておける発電の余力が小さくなっています。そこで,1日のうち夏なら昼過ぎの時間帯,冬なら朝方と夕方から夜にかけての時間帯に電力ピークが来るということで,その時間帯の「節電」がいわれているのです。24時間少しでも電気代を安くするための最初にあげたような「電気の節約」とは違う意味での『節電』なのです。ここを混同されている発言が多いように見うけられます。

「100Wって?;ワットとワットアワー」(東大・岩船由美子研究室

もちろん,基本的に無駄な電気は使わないようにしなければなりません。これは昔から「もったいない」という言葉で言われてきたことです。では「電気の節約」とは相反するようなEVの場合,「無駄」な電気の使い方になっているのでしょうか。

EVは,深夜などの電力需要の少ない時間帯の電力利用を基本としていますし,ガソリンよりも電気の方がコストが低いので「無駄」ではないと考えます。

まず第一に,EVは自宅での充電が基本となります。街中での急速充電という方法もありますが,リチウム電池にとっては200Vで時間をかけて充電した方が電池が長持ちするといわれていますし,現在市販されているEVを200Vで満充電にするためには7〜8時間(私のi-MiEV Mグレードで4時間半)必要ですから,夜間に自宅での充電が現実的です。帰ってきたときに携帯電話を充電しておく感覚です。

もちろん,電力ピークを外すためと,より安い電気代のためにタイマーなどを利用して23時以降に充電することが大切です。(関西電力では「はぴeタイム」,東京電力では「おトクなナイト8」)オール電化住宅の割引プランである関西電力の「はぴeタイム」の場合,23時から翌朝7時までの電気料金は通常単価の24.21円の約3分の1で8.19円となっています。(安い深夜電力は原発での発電を前提としていたところがあるので,今後は値上げするかもしれない)

第二にEVの使用でどれくらいコストが下がっているか私のEVで計算してみます。

2011年8月18日から12月28日まで133日間で乗った距離は4428kmです。(1日平均約33km)その間の自宅でのEV電力量は516.7kWhで,主に1kWh8.19円のナイトタイムで充電しましたが,3回(14.1kWh)は1kWh28.02円のデイタイムで充電しています。(2011年11月5日のは修正)
また,日産の急速充電器で3回充電していますから525円×3=1575円を,多賀SAで2回充電して100円×2=200円(NEXCO中日本)を払っています。
他に三菱の急速充電器あいとうマーガレットステーションで充電させてもらっていますが,こちらは無料でした。

これらを合算すると以下のようになります。
(516.7-14.1)×8.19+14.1×28.02+525×3+100×2=6286.376円

約6286円÷4428km=1.42円/km

(1L=139円として139円でどれだけ走るか計算すると約98kmで,ガソリンに換算すると約98km/Lとなる。これだけみても30km/L走ることができると胸を張るハイブリッド車や第3のエコカーと呼ばれる車と比較してもいかにEVが効率がよいかがわかる。ただし,オール電化住宅の割引プランである関西電力の「はぴeタイム」を前提とする)

以前の軽自動車は約15km/L走ってましたので、今回のデータを軽自動車に置き換えると約295Lのガソリンが必要で、今の価格 139円/L(12月28日全国平均価格)で試算すると約41033円となります。かかったであろうガソリン代から実際に支払った電気代を引くと次のようになります。41033円ー6286円=34747円。つまり4ヶ月間とちょっとで約35000円近く浮いたことになります。このように金銭的な面からいっても,ガソリンを使うよりも電気を使うことによって「無駄」をはぶいているといえるでしょう。

ところが,よくあるEVに批判的な意見には,電気も石油資源で作っているではないかというものがあります。しかし,実際にかかったコストで示したように,少なくとも車の燃料消費量は6分の1(98km/L÷15km/L=6.5)ほどに「節約」したのですから,この分の石油を他に回したり発電に回したりすることができるでしょう。EVの利用によって無駄を省いたともいえます。

また,電気自動車の普及がすすめば電力需要の増加をもたらし,また「原発が必要」ということになりかねない,という意見もあります。そこで,再度計算をしてみます。

2011年11月25日時点でEVに対して出された補助実績表から見ると13年間ほどで約1万5千台のEVですから現時点での電力需要は小さなものでしょう。ところが,EVが100万台(2011年11月のすべての新車販売台数約40万台)となり,夜間(23時〜翌朝)にそれらが一斉に充電を始めると仮定すると,家庭では200V15〜20Aが一般的な数値ですから1台が1時間で200V×15A×1h=3000Wh=3kWhを必要とします。それが100万台分ですから1時間で300万kWh,これは多いように見えますが,全国に分散しての数値ですからそう多くはないでしょう。(充電時間はほとんど使い切ったところから充電したとして4〜8時間だから,満充電に300万kWh×8h=2400kWhを最大限必要とする)

例えば,東京電力管内だけに100万台があったとしても,東電の火力発電所だけで約3277万kW(1時間発電して3277万kWh,8時間で26216万kWh)の発電能力があるそうですから,その10%ほど電力消費量が増えることになります。しかし,この電力消費量なら、比較的能力に余裕のある時間帯(23時〜翌朝)での充電ですから負荷はかからないでしょうし,発電能力内ですから発電所を増やす必要もありません。ですから「原発」は全く必要としないといえます。

節電社会にこそ電気自動車を(Voice 2011年10月号)清水 浩

こうしてみてきたように「節電」とEVとは相反するものではなく,これからは必要不可欠なものとなっていくのではないかと思います。EVは「節電」に逆行するものだという意見は,本当の意味での「節電」を誤解したものであって,「省エネ」にプラスになることはあってもマイナスになることはないのです。

(※1=バッテリーに充電したり揚水発電所といった違った形で蓄えたりすることはできる)